【縦版】注意課題（TMT様課題）- リハプリント

2024年7月28日

【縦版】注意課題（TMT様課題）
【PT・OT・ST】リハビリ専門家のための教材・素材集

【更新状況】 2024年7月28日（日）

ページを公開しました。

注意課題に関するプリントを無料公開していきます。
今回の注意課題は

・Trail A
：1から25まで順番に数字をつなぐ

・Trail B
：数字と文字を順番に交互につなぐ

課題です。
上記のような注意課題でよく使われるものとしては

・TMT（Trail Making Test – トレイル・メイキング・テスト）

が有名です。

TMTの歴史としては、アメリカ陸軍の兵士の評価「Army Individual Test Battery」の1つとして開発され、視覚性注意を保持し、注意（タスク・課題）の切り替えなどの能力を評価するために設計されたようです。
現代の臨床では、脳血管障害後の高次脳機能障害の1つである注意機能障害に対する注意機能のスクリーニングの位置付けとして使われる傾向があるのではないかと思います。

課題をこなすには

✔︎ 注意機能（選択性・持続性・転導性・分配性注意）
Trail Aの一例
：プリント内の様々な場所に視線を向けながら課題を成し遂げるために注意を保ち続ける。
Trail Bの一例
：数字から文字へ思考を切り替えながら注意を保ち続ける。

✔︎ ワーキングメモリ（Working Memory：作業記憶・作動記憶）
Trail Aの一例
：次に見つける数字や文字を覚えておく。
Trail Bの一例
：数字から文字へ思考を切り替えながら、次に見つける数字を覚えておく。

✔︎ 思考セットの変換（思考の柔軟性）
一例：Trail Bで数字から文字へ思考を切り替える。

などの情報処理能力が要求されます。

また、今回のような筆記で実施する置き換え課題では

・視覚運動調整 (Visuomotor Coordination)

も要求されますので、課題の結果を判断するには

・情報処理能力の問題か？
・視覚運動調整（運動機能：手の巧緻性など）の問題か？

を考慮する必要があります。

【対象例】
・注意機能障害疑いの方など
・遂行機能障害の方
・半側空間無視（左側空間無視 – USN）の方：文字のキューを利用した空間探索トレーニング

【実施例の説明】
①以下、説明例です。
Trail A：「1から25まで、できるだけ速く順番に線をつないでください。」
Trail B：（練習用の用紙を使って）「数字とひらがな（カタカナ・アルファベット）を順番に交互に線でつないでください。できるだけ速く線を引いてください。」
（Trail A・Trail Bともにストップウォッチで時間を計測します）

②課題を実施中に次のターゲットを間違えた場合には、ストップウォッチは止めずに
「間違えましたよ。」
（Trail A）「（最後に正解しているターゲットまで戻るのを誘導し）ここの数字は〜なので、次の数字は何ですか？」
（Trail B）「（最後に正解しているターゲットまで戻るのを誘導し）次に探すのは数字ですか？文字ですか？」
などと助言し、線を消しゴムで消してもらい課題を再開します。間違えた場合には、何回間違えたなどを記録（エラー数の記録）しておきます。

③制限時間の一例として
Trail A：150秒（2.5分）
Trail B：300秒（5分）
という基準もあるようですが、縦版の基準ですので、このページの横版を使われる方は参考程度に捉えていただければよいかと思われます。

④Trail AとTrail BのTMT比が「1.5」を超える場合には、分配性注意（注意の配分）の低下が疑われます。

⑤認知機能の変化を捉えやすいように「課題を完了させた時間」などを記録しておきます。

【参考情報】TMTの研究（縦版と横版の違い）

「縦版Trail Making Test」（英語のオリジナル版）と「横版 Trail Making Test」（日本版など）によって成績が異なることがわかっています。

参考：
縦版 Trail Making Test と横版 Trail Making Test における成績の違いについての一考察
―若年健常者における縦版，横版 Trail Making Test 成績の比較から―
神経心理学 2017年
DOI: 10.20584/neuropsychology.17008

基本的には横版の方が時間がかかるようです。
理由の一例としては

・課題を成し遂げるために引く必要のある線の長さが長い
・引く線がランダムに重なる傾向にあるため，視覚探索に時間がかかる

ことがあげられます。
最近は、運転の可否を判断するための基準値の研究なども行われているようですが、研究論文などで基準値（カットオフ値・年代別平均値&標準偏差）を参考にする場合には、研究論文で使われているTMTは

・縦版なのか？横版なのか？

を把握しておく必要があります。

このページに公開させていただいている各プリントは、横版の課題

横版の注意課題（TMT様課題）
：注意課題（TMT様課題）のプリントのダウンロードページへ　

を、それぞれ90度回転させて作成しています。
そのため、対応する各課題の縦版と横版の結果を比較してみるのも興味深いのではないかと思います。

【TMT様課題：Trail Task】